博物誌 - 魚介類
アンコウ(鮟鱇):
アンコウ目 アンコウ科
Anglerfish (英)
俗に「西のフグ、東のアンコウ」と言われ、古くから日本人に珍重されてきた冬が
旬の海の幸。
そのせいか江戸期に書かれた「和漢三才図会」「魚鑑」などに詳細な説明が著者
のヨダレと共に記されている。
特に天保年間に発行された魚鑑には、性質は遊流連緩(ゆるゆるしずか)にして、
食を求むること易からず。
その吻上に釣竿という名の長い鬚が二本あり、飢えるとその釣竿を延べて先端を
蠕々と虫が泳ぐように動かす。
小魚その蠕々たるを見て、良き餌ならんと群来るとき、口をくわっとひらき、一吸い
にする。
とその生態について驚くほど詳細かつ正確にしるされている。
ところでアンコウとは通常数百mの海底に棲息する魚である。
一体どうやって著者の武井周作はアンコウの生態を観察したのであろうか?
アクアラングを装着しても難しい深海魚の観察を、江戸の博物学者たちは素潜り
で行ったと言うのだろうか…
謎を解く鍵としては「うつろ舟」の存在が上げられる。
うつろ舟とは曲亭馬琴が報告している潜水艦様の船で、上面はガラス張り、継ぎ目
はチャンで埋めてあると記されている。
乗っていた人物の様子からして露西亜の船ではないかとあるので、江戸の昔から
ロシアの潜水艦とは日本領海を侵犯する存在だったようだ。
このロシア艦の存在を武井周作も知っており、密かに利用していたとすれば辻褄
が合う。
うつろ舟の目撃地点がアンコウで有名な茨城県の大洗町であるという点からも
この仮説を裏付けられる。